朝いちばんにFAXの束を確認して、品番と数量を手で打ち直す。電話で受けた注文をメモして、あとで入力する。読み間違いや入力漏れが怖いので、ダブルチェックにも時間がかかる。卸やメーカーの受注の現場では、今もこの形がふつうです。
少し古い数字ですが、業務システムを手がけるアイルが2020年に公表した調査では、中堅・中小企業の企業間取引の受注方法は、FAXが37.2%、電話が16.7%、対面の営業が15.6%でした。Web受注の仕組みを入れている企業は14.3%にとどまっています(受注業務の担当者734人への調査)。
同じ調査で、Web受注を入れるときの一番の不安は「得意先に使ってもらえるか」で、55.2%でした。仕組みそのものより、相手が移ってくれるかが心配だということです。
この記事では、FAXや電話の注文をWebに移すときに、システムを選ぶ前に決めておく5つのことをまとめます。ここが決まっていれば、どの仕組みを使っても大きく外しません。
目次
決めること1:最初に使ってもらう取引先
いちばん多い失敗は、全部の取引先に一斉に切り替えを頼むことです。FAXに慣れた取引先ほど、新しいやり方を面倒に感じます。断られたり、結局FAXで届いたりして、社内に「Webとそれ以外」の二重の流れが残ります。
最初は3〜5社に絞ります。選ぶ目安は次のとおりです。
- 注文の回数が多い(週に何度も注文がある)
- 毎回だいたい同じ品番を注文している
- 先方の担当者がパソコンやスマホでの作業に慣れている
- 付き合いが長く、試しに使ってほしいと頼みやすい
この数社に使ってもらって、つまずいた点を直してから、ほかの取引先に広げます。FAXや電話の注文は、しばらく並行して受ける前提で計画します。 全部の取引先がWebに移る日を目標にするより、「注文の半分がWebで届く」くらいを最初の目標にするほうが現実的です。
決めること2:価格の見せ方
Web受注でいちばん準備に時間がかかるのは、価格です。FAXや電話の注文では、担当者が頭の中で「この取引先はこの掛け率」と調整していることがよくあります。Webでは、それを全部、仕組みに書き出す必要があります。
まず、今の価格の決め方を表にします。
| 取引先 | 掛け率 | 個別に約束している単価 | 最低ロット | 支払条件 |
|---|---|---|---|---|
| A商店 | 定価の60% | なし | 1ケース | 月末締め・翌月末払い |
| B社 | 定価の55% | 品番○○だけ別単価 | 3ケース | 月末締め・翌月末払い |
| C社(代理店) | 定価の50% | なし | 10ケース | 前払い |
この表で見たいのは、掛け率が何段階あるかと、個別の約束がいくつあるかです。段階が少なく、例外が少ないほど、Webに移すのは簡単です。逆に、取引先ごとに単価がばらばらだと、仕組みの選び方も費用も変わります。
もう一つ決めておくのは、ログインしていない人に価格を見せないことです。卸価格が一般の人や競合に見えてしまうと、取引先の信用を失います。取引先ごとにアカウントを発行し、ログインした人にだけ、その取引先の価格が見えるようにします。
価格の分け方は、別の記事で詳しく書いています。→ 取引先ごとに価格を変えるECサイトの作り方
決めること3:注文のルール
FAXの注文用紙には、たいてい細かいルールが書いてあります。Webでも同じルールを、注文画面で守ってもらえるようにします。
- 注文の単位:ケース単位(6個ずつ、など)、最低ロット、1回の上限
- 締め時間:「15時までの注文は当日出荷」のような締めの時刻と、土日祝の扱い
- 送料:「1万円以上は送料無料」「離島は別料金」など、卸向けの送料のルール
- 納期の伝え方:在庫がない商品をどう表示するか、取り寄せの日数をどう伝えるか
前述の調査でも、Web受注の課題として「単価設定が複雑」(28.9%)、「商品管理が複雑」(26.2%)、「配送・送料のルールが複雑」(21.4%)が挙がっています。ルールが多いほど、Webに移す前の整理に時間がかかります。
整理していると、「この例外は本当に必要か」と見直すきっかけにもなります。何年も前の特例が残っているだけ、ということもよくあります。
決めること4:支払いと請求
卸の支払いは、月末締め・翌月末払いの掛け払いが多いと思います。Webに移すときは、次の3つを決めます。
- 支払い方法:掛け払い(銀行振込)を続けるのか、カード払いも受けるのか
- 請求書の出し方:注文ごとに出すのか、月末にまとめて出すのか
- 入金の確認:誰が、いつ、振込を確認して記録するのか
ここは仕組みによってできることが違います。たとえばShopifyの卸売機能は、注文ごとに「注文日から30日」のような支払期限を付ける形で、1か月分をまとめて1枚の請求書にする機能は標準にはありません。月まとめの請求書は会計ソフト側でつくる、といった分担を先に決めておきます。
支払いと請求の決め方は、こちらにまとめています。→ 掛け払い・請求書払いを卸売ECでどう扱うか
Shopifyで卸の注文を受ける場合の詳しい仕組みは、こちらにまとめています。→ Shopifyで卸売(BtoB)の注文を受ける方法
決めること5:注文が入ったあとの流れ
Webで注文が届くようになっても、そのあとの流れが今のままだと、手間はあまり減りません。注文が入ってから出荷・請求までを、紙に書き出してみます。
- 注文が届いたことに、誰が、どうやって気づくか(メール通知、画面の確認)
- 内容を確認して、注文を確定するのは誰か(在庫・納期の確認)
- 出荷の指示をどう出すか(倉庫や出荷担当への伝え方)
- 会計ソフトや在庫の台帳に、どう反映するか
ポイントは、FAXや電話で届いた注文も、Webの注文と同じ箱に入れることです。Shopifyなら、FAXで届いた注文を社内の担当者が管理画面から入力できます。そうすれば、注文の確認・出荷・請求の流れが一本になり、「Webの注文は画面で、FAXの注文は紙で」という二重管理を避けられます。
今、在庫や受注を別のシステムで管理している場合は、そこにどうデータを渡すかもここで決めます。最初は手作業で写し、注文が増えてから自動でつなぐ、という順番でもかまいません。

取引先への案内のしかた
5つが決まったら、最初の数社に使ってもらいます。案内するときは、次の点を押さえると移ってもらいやすくなります。
- 相手の得を先に伝える:「夜でも注文できる」「過去の注文から同じものをすぐ注文できる」「在庫が見える」など、先方の手間が減ることを書く
- 最初の1回は一緒にやる:電話をつないだまま、アカウントの作成から最初の注文までを一緒に進める
- FAXをすぐには止めない:「今までどおりFAXでも受けます」と伝えて、安心して試してもらう
- 聞きたいことの窓口を決める:操作で困ったときに誰に聞けばよいかを、案内に書いておく
Shopifyの卸売機能には、取引先に招待メールを送ってアカウントをつくってもらう仕組みがあります。メールだけ送って終わりにせず、最初の1回は電話でフォローするのがおすすめです。
まとめ
- FAX・電話の注文をWebに移すときは、システムを選ぶ前に5つのことを決める
- 1. 最初に使ってもらう取引先(3〜5社から。FAXはしばらく並行)
- 2. 価格の見せ方(掛け率の段階と個別の約束を表にする。ログインしない人には見せない)
- 3. 注文のルール(単位・締め時間・送料・納期)
- 4. 支払いと請求(支払い方法・請求書の出し方・入金確認の担当)
- 5. 注文が入ったあとの流れ(FAXの注文も同じ箱に入れる)
- 取引先には、相手の得を先に伝え、最初の1回は一緒に進める
「うちの場合、どこから手を付ければいいか」は、今の注文の届き方と取引先の数、価格の決め方を聞けば、だいたい見えてきます。今のFAX用紙や価格表をそのまま見せていただければ、Webに移すときに何を決める必要があるかを一緒に整理します。
FAXや電話の注文を、どこまでWebに移せるか。
取引先の数と価格表の種類を教えていただければ、Shopifyのどのプランで足りるか、標準機能で足りない部分はどこかをお返事します。制作費も、Shopifyの利用料やアプリ代といった実費も、先にすべてお見せします。営業時間内のご相談には1時間以内に初回返信します。
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