これまで問屋や小売店を通して売ってきたメーカーが、自社のネットショップで直接お客さまに売り始める。最近よく聞く動きです。利益率が上がる、お客さまの声が直接届く、在庫の動きが見える、と良いことが多い一方で、一つ気がかりがあります。今まで売ってくれていた卸先・小売店との関係です。
卸先からすれば、メーカーが同じ商品を直接売り始めるのは、自分たちのお客さまを取られるように見えるかもしれません。ここを雑に進めると、長年の取引先との関係が崩れます。
この記事では、メーカーが直販を始める前に、卸先と決めておくことをまとめます。
目次
決めること1:直販の価格
いちばん揉めやすいのが価格です。基本の考え方は、直販の価格を、卸先の店頭での売値より安くしないことです。
メーカーが直販で安く売ると、卸先の店では売れなくなります。直販は卸の利益がない分だけ利益率が高いので、つい値下げやセールで売りたくなりますが、それをすると卸先との関係が一気に悪くなります。
| 直販の価格 | 卸先から見ると |
|---|---|
| 希望小売価格と同じ | 自分の店と同じ条件。受け入れられやすい |
| 希望小売価格より安い・頻繁にセール | お客さまを取られる。関係が悪くなる |
| 送料無料・ポイント還元を大きく付ける | 実質的な値下げに見える |
送料無料やポイントも、お客さまから見れば実質の値下げです。直販だけ大きな特典を付けるときは、卸先にどう見えるかを考えます。
注意:卸先の売値を決めてはいけない
ここで気をつけたいのが、反対側の話です。メーカーが自分の直販の価格を決めるのは自由です。しかし、卸先・小売店が売る価格を、メーカーが決めて守らせることは、独占禁止法で原則として禁止されています(再販売価格の拘束)。公正取引委員会の指針でも、この点ははっきり書かれています。
「希望小売価格」を参考として示すことは問題ありません。問題になるのは、「この価格より安く売ったら出荷を止める」のように、守らせる手段をとる場合です。
つまり、「直販と卸先で価格をそろえましょう」という話し合いは、メーカーが自分の直販価格を卸先の店頭価格に合わせるという形で進めます。卸先に「この価格で売ってください」と求める形にはしません。迷う場合は、公正取引委員会の相談窓口や専門家に確かめてください。
決めること2:直販で売る商品
全部の商品を直販でも売る必要はありません。卸先と商品を分けると、ぶつかりにくくなります。
- 直販だけの商品:限定の色・サイズ、詰め合わせ、名入れや別注、訳あり品など
- 卸先が扱っていない商品:卸先の店では置き場所がない商品、少量しか作らない商品
- 補充・まとめ買い:卸先の店で一度買ったお客さまが、消耗品を定期的に買い足す用途
反対に、卸先の主力商品を直販で前面に出すと、真正面から競合します。
決めること3:卸先への伝え方
直販を始めることは、卸先に先に伝えます。 あとから知られると、隠れて始めたように見えます。伝えるときは、次の点を話しておくと安心してもらえます。
- 直販の価格は、店頭の売値より安くしないこと
- 直販で扱う商品(直販限定の商品が中心であること)
- 直販のお客さまから「近くで買える店」を聞かれたら、卸先を案内すること
- 直販で集まったお客さまの声や、よく売れる商品の情報を共有すること
直販のサイトに「取扱店一覧」を載せ、近くの店で買いたい人を卸先に案内すると、直販が卸先の味方にもなります。
決めること4:在庫の優先順位
直販と卸で在庫を共有する場合、品薄のときにどちらを優先するかを決めておきます。直販の注文を優先して卸先への出荷が遅れると、関係が悪くなります。基本は卸先への出荷を優先し、直販は在庫に余裕がある分で売る、という順番が無難です。
一般向けの直販と卸の注文を同じネットショップで受ける場合は、在庫が共通になります。このときの注意点は、別の記事にまとめています。→ 一般販売と卸売を1つのショップで両立するときの注意
卸の取引そのものもWebに
直販を始めるのにあわせて、卸先からの注文もWebで受けられるようにする方法もあります。卸先にとっても、夜でも注文できる、過去の注文からすぐ再注文できる、在庫が見える、といった利点があります。
直販のネットショップと卸の注文窓口を同じ仕組みでつくれば、商品の情報や在庫を一か所で管理できます。卸先ごとの価格の分け方は、こちらにまとめています。→ 取引先ごとに価格を変えるECサイトの作り方
まとめ
- 直販の価格は、卸先の店頭での売値より安くしない。送料無料やポイントも実質の値下げになる
- ただし、卸先の売値をメーカーが決めて守らせるのは、独占禁止法で原則禁止。メーカーが自分の直販価格を合わせる形で進める
- 直販では、限定品・詰め合わせ・別注・補充など、卸先とぶつかりにくい商品を中心にする
- 直販を始めることは卸先に先に伝え、取扱店一覧などで卸先にも得がある形にする
- 品薄のときは卸先への出荷を優先する
直販を始めるかどうかは、卸先との関係まで含めた判断です。STORE LABOでは、直販のネットショップと卸の注文窓口をまとめてつくることもできます。今の取引先の構成と、直販で売りたい商品を教えていただければ、ぶつかりにくい始め方を一緒に考えます。
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