卸の注文をWebで受けるとき、いちばん手間がかかるのが価格です。一般のお客さま向けのネットショップなら、価格は一つで済みます。卸では、取引先によって掛け率が違ったり、長い付き合いの取引先にだけ特別な単価があったりします。
FAXや電話の注文なら、担当者が頭の中で調整できました。Webでは、その取り決めを全部、仕組みに書き出す必要があります。この記事では、取引先ごとに価格を変えるECサイトのつくり方を、価格の決め方の型ごとに説明します。仕組みの説明はShopifyを例にしています(2026年10月28日に公式ヘルプで確認)。
目次
まず、価格の決め方は3つの型に分かれる
取引先ごとの価格の決め方は、だいたい次の3つの型のどれかです。
| 型 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 型1:一律の掛け率 | どの取引先にも、定価に同じ掛け率をかける | 卸先は全部、定価の60% |
| 型2:ランク別の掛け率 | 取引先をいくつかのランクに分けて、ランクごとに掛け率を変える | 一般の卸先60%、大口55%、代理店50% |
| 型3:取引先ごとの個別単価 | 取引先ごとに、品番ごとの単価を個別に決めている | A社は品番○○を1,200円、B社は1,150円 |
実際には、型2を基本にして、一部の取引先・一部の商品だけ型3の例外がある、という形がいちばん多いと思います。どの型か、例外がいくつあるかで、仕組みの選び方も費用も変わります。
価格表を整理する手順
仕組みを考える前に、今の価格を表に書き出します。
- 取引先の一覧をつくる。 取引先名と、今の掛け率(または価格の決め方)を並べる
- 掛け率でグループに分ける。 同じ掛け率の取引先をまとめる。何グループになったかを数える
- 例外を書き出す。 「この取引先のこの商品だけ別の単価」という約束を、取引先・品番・単価の3列で書き出す
- 数量による値引きを書き出す。 「100個以上なら単価を下げる」など、数量で変わる価格を書き出す
- 例外を見直す。 なぜその単価なのか、今も必要かを確かめる
5番目がいちばん大事です。整理してみると、何年も前の値上げのときに据え置いた単価がそのまま残っていたり、もう取引の少ない取引先の特例だったりすることがよくあります。例外を減らせるほど、Webの仕組みは簡単で安くなります。
Shopifyでの仕組み:カタログ
Shopifyでは、卸の価格のセットを「カタログ」と呼びます。カタログでは次のことを決められます。
- 全体の掛け率:カタログに入れた商品全体の価格を、一定の割合で上げ下げする(例:定価から40%引き)
- 商品ごとの固定価格:特定の商品・色やサイズ違いだけ、決まった価格にする。固定価格は全体の掛け率より優先される
- 見せる商品:そのカタログで注文できる商品を選ぶ
- 数量のルール:最小・最大の数量、注文の単位(6個ずつなど)
- 数量別の価格:同じ注文で一定の数量以上を買うと、単価が下がる
名入れや別注のように、数量と加工で価格が変わる注文の受け方は、こちらにまとめています。→ 名入れ・別注・数量別の単価をWebで受けるには
このカタログを、取引先(Shopifyでは「企業」と「拠点」)に結びつけます。取引先の担当者がログインすると、そのカタログの価格で商品が表示されます。ログインしていない人には卸価格は見えません。
全体の掛け率と固定価格の関係は、例にするとわかりやすくなります。定価10,000円の商品で、全体の掛け率を「40%引き」にすると6,000円です。この商品に固定価格6,500円を設定すると、固定価格が優先されて6,500円になります。
型ごとのつくり方
| 型 | Shopifyでのつくり方 | 必要なプラン |
|---|---|---|
| 型1:一律の掛け率 | カタログを1つつくり、全体の掛け率を設定する | Basic以上 |
| 型2:ランク別の掛け率 | ランクの数だけカタログをつくる。3ランクまでなら Basic〜Advanced で足りる | ランクが3つまでなら Basic以上、4つ以上なら Plus かアプリ |
| 型3:取引先ごとの個別単価 | 取引先ごとにカタログをつくり、商品ごとの固定価格を入れる | 取引先の数だけカタログが要るので、基本は Plus かアプリ |
Basic・Grow・Advanced では、使えるカタログが全部で3つまでです。特定の取引先だけに向けたカタログをつくることもできますが、それも3つの中に数えます。型3の取引先が何社もある場合は、3つでは足りません。
その場合の選択肢は3つです。
- Shopify Plus にする(カタログの数に制限がなく、取引先ごとに直接割り当てられる。月368,000円〜)
- 卸売向けのアプリで、取引先ごとの価格を補う(アプリの月額がかかる)
- 価格の決め方を見直して、3ランク程度にまとめる
費用の差が大きいので、まず3番目ができないかを考えるのがおすすめです。費用の全体は別の記事にまとめています。→ 卸売(BtoB)ECにかかるお金
気をつけたい3つのこと
1つの取引先に複数のカタログを付けると、一番安い価格が出る
Shopifyでは、1つの取引先に複数のカタログを割り当てられます。そのとき、同じ商品に複数の価格があると、一番安い価格が表示されます。
たとえば、取引先Aに「ランク別の60%のカタログ」と「特別価格のカタログ」の2つを付けると、商品ごとに安いほうの価格が出ます。意図どおりなら問題ありませんが、組み合わせ方を間違えると、思っていたより安い価格で注文が入ります。設定したら、取引先ごとにログインして、実際に見える価格を確かめます。
定価を改定したときの固定価格
全体の掛け率で決めている価格は、定価を変えれば自動で変わります。一方、商品ごとに入れた固定価格は、定価を変えても変わりません。値上げのときに固定価格の更新を忘れると、古い単価のまま注文が入ります。固定価格を入れた商品は、一覧にして管理しておきます。
一般のお客さまに卸価格を見せない
一般向けのネットショップと同じストアで卸の注文も受ける場合は、卸価格が一般のお客さまに見えないことを必ず確かめます。卸の取引先にだけ違う画面(案内の文章や購入手続き)を見せたい場合は、Advanced以上のプランが必要です。卸専用のストアにするなら、ログインしていない人には価格を出さない設定にできます。
同じ店で一般向けと卸を両方売るときの注意点は、こちらにまとめています。→ 一般販売と卸売を1つのショップで両立するときの注意
まとめ
- 取引先ごとの価格は「一律の掛け率」「ランク別の掛け率」「取引先ごとの個別単価」の3つの型に分かれる
- 仕組みを考える前に、価格を表に書き出し、例外を見直す。例外が少ないほど簡単で安くなる
- Shopifyではカタログで価格を決める。全体の掛け率と、商品ごとの固定価格(固定価格が優先)を組み合わせる
- Basic〜Advanced はカタログが3つまで。個別単価の取引先が多いなら Plus かアプリ、または価格の整理
- 複数のカタログを付けると一番安い価格が出る。設定後は取引先ごとにログインして確かめる
「うちの価格表だと、どの型になるか」は、価格表を見せていただければすぐにわかります。今の掛け率と例外の一覧があれば、Shopifyでどうつくるか、Plusやアプリが必要かをお返事します。
FAXや電話の注文を、どこまでWebに移せるか。
取引先の数と価格表の種類を教えていただければ、Shopifyのどのプランで足りるか、標準機能で足りない部分はどこかをお返事します。制作費も、Shopifyの利用料やアプリ代といった実費も、先にすべてお見せします。営業時間内のご相談には1時間以内に初回返信します。
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